コラム・レポート

性器にアルコール、助教授の意趣返しに怒り(87)

性器にアルコール、助教授の意趣返しに怒り(87)鹿児島市下竜尾町(しもたつおちょう)にある「上町南風通り(かんまちなんぷうどおり)商店街」の広告フラッグ。

(著者からの要望で、がん闘病中で具体的な治療法をお知りになりたい方には、最後にお知らせがあります)
【隼人の風】助教授回診の朝がやってきた。大勢の後輩の医師を引き連れて、病室から病室へと肩を揺すって練り歩く「やっさん」(漫才の横山やすしの愛称)助教授の様子は、したり顔で手荒にひとりひとりのベッドのレールカーテンを開けていく「従者」のようなナースの印象と相まって、まるで大奥をのし歩く将軍のようだった。

半身を起こして待っていると、主治医の「司祭」やその下の「牧童君」の顔も見えた。私のベッドの周りのカーテンが開けられると、「お付き」のナースに助教授が目配せして、私のスポーツウェアが引き下ろされた。


大儀そうに一べつをくれて私に何か言おうとした「やっさん」に、「司祭」が「全摘まではどうでしょうか?まだ残す可能性もあるかも・・・」と言いかけると、まるで食ってかかるような剣幕で「T3があるじゃないか!今さら何を甘いことを言ってるんだ!」と、怒った時の天才漫才師「やっさん」顔負けの勢いで助教授は一息にまくしたてた。

そして、何を思ったかトレーからピンセットでつまんだ脱脂綿に含ませた液体を取ると、いきなり私の性器に塗りつけた。焼け火バシが当たったような激痛に思わず呻いて身をよじった私に対して、彼は「男の子、男の子!」と、大人に対して言うにはとてもナメた口を叩いてから隣のベッドへと移っていった。

私が、思わず吹き上げる怒りに顔から血の気が引いて、助教授の後ろ姿をにらみつけたところで「牧童君」の悲しげな瞳にぶつかった。他の患者の回診が終わって意気揚々と「やっさん」が引き上げていった後、「牧童君」がそっと立ち寄ってくれた。

鹿児島市北部の旧城下町にある、上町南風通り商店街は、西郷隆盛をまつる南洲神社の参道も近く、病院が集中している地域である。「せごどん」とは「西郷どん」、「いしゃどん」とは「お医者さん」の愛称、「よかみせどん」とは「良い商店」の愛称。

私が「あれくらいで身をよじるとは俺ってよっぽど根性ないんですかね?」と言うと、「牧童君」は「あれはアルコールですから、生身の人間なら誰だってああなりますよ。何も恥ずかしいことじゃないです」と静かにささやいた。

なんとも理不尽な腹立たしい出来事だったが、これで「アイツが膀胱の全摘出をもくろんでいることがわかった」と私は思った。まぁ あの男がもくろもうがどうしようが、私の体内戦線が防御の限界に来ているのなら腹を決めないといけないわけだが・・・。

ひょっとして新薬の実験台になることを私に断られたから、それを根に持っての嫌がらせだったのだろうか?もし、そうだとすれば、「ひん死の患者をつかまえてとんでもない野郎だなぁ」と私はまた「壁に耳あり」の献体した死者の体を弄んだ医師の身の毛もよだつエピソードを思い出した。

人間の尊厳を汚すような資質しか持たない者が指導的立場の医師になることもある医療の世界の危うさを感じた(九州出身で、自衛隊を経て地方で働く重浪明さんが、末期がんから生還した自らの話を不定期にエッセイ風に書きます。

また、重浪明さんからの申し出で、現在、がんの闘病中の方で、具体的な治療法をお知りになりたい方は銀座新聞ニュースまでメール(allginza@gmail.com)でご一報ください。著者から追って連絡させていただきます)。。

注:「やっさん」は漫才の横山(よこやま)やすし(1944-1996)の愛称で、顔や雰囲気が似ているところから、著者が助教授のことをこう呼んだ。

注:「T3」の「T」とは局所でのがんの進展度を示しており、1から4まであり、「T3」とはがんが膀胱筋層を越え、周囲脂肪組織に浸潤している状態をさしており、「T3」の段階に達した人は膀胱全摘出術をしても、5年生存率は10%から50%といわれ、完治するのがひじょうに難しい。

注:「壁に耳あり」は大学の医学部の学生が献体された遺体の耳をそぎ落とし、壁に付けて「壁に耳あり」とふざける行為のことを指しており、実際に行われているかどうかは不明だが、一般に医大生が行っていると広く思われている。

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