コラム・レポート

埋蔵豊富な代替の市場化で、石油の高騰は続かない(85)

埋蔵豊富な代替の市場化で、石油の高騰は続かない(85)

【窓から見えるGINZA】石油の値上がりが止まらない。原因はナイジェリアの油田地帯の内戦だというが、どこまで真相なのかわかったものではない。ここ数年の石油の値上がりに、その都度、原因なるものが解説されてきたが、その要因が消えてなくなっても一向に油の値段は下がらず、また新しい「原因」が探し出されてくる。

結局売り手と買い手の需給関係で決まる物の値段なのだから、今の値段でなお買いたいと思う人が多いというほかない。 この値上がりはどこまで続くのか。いずれ1バレル=300ドルまでいくという人もいるようだが、そうはいかないだろう。その理由は2つある。


ひとつは、石油の値段が上がると、代替エネルギーの開発が急速に進むからだ。その結果、エネルギーの供給者が増える。代替エネルギーといっても風力発電や水力発電といった自然エネルギーではない。

「オイル・サンド」や「オイル・シェール」、さらには「メタン・ハイドレード」といった、今の価格レベルでは採算が取れないエネルギー資源が利用可能になってくるのだ。この埋蔵量は膨大で、これらが利用可能になればエネルギー危機はあっという間に解消されるだろう。

昔、第4次中東戦争(1973年)後のオイルショックの際、同様に代替エネルギーがもてはやされた時期がある。そのときの主役は原子力で、日本は、原子力船「むつ」の開発に力を要れ、プルトニウムサイクルの実現を目指したものだ。

結局、安全性の問題があり、これらのプロジェクトはとん挫したが、そうなった背景には、代替エネルギーの開発により強力な競争相手が生まれることを恐れたOPEC(石油輸出国機構)が、その後の石油価格を安定させ、エネルギー問題の深刻度合いが低下したことが、大きいと思う。

石油の値上がりを抑えるもう1つの理由は、買い手側にある。今の買い手は投機的資金だという人が多い。これらの資金はほかに買うものが出てくればそちらに向かう。今はサブ・プライムローン(低所得者向け高金利住宅ローン)の影響で、金融市場に買うものがない。

しかし、2008年後半にはアメリカ経済も回復に向かうだろう。そうすれば、代替エネルギーとの関係で上値に限界のある石油から、ほかの資産に資金が向かう時期がきっと来る。そうなれば、さしもの石油価格も値を上げることをやめるだろう。

深刻なのは、原油よりも食料価格の値上がりだ。これは、大規模な増産がない限り、不可逆反応のように上がり続ける可能性がある。

「食糧自給率」が極めて低い日本こそ、この問題にもっと深刻に取り組むべきではないか。減反政策の見直しのほか、農業技術協力と安定供給契約を組み合わせた農業外交や、広大な海洋の利活用など、取り組むべき課題は多くあると思うがどうだろうか(著者の意見は、銀座新聞ニュースを代表するものではありません。元国土交通省局長の星野茂夫さんが日常の中で思っていることを不定期に書きます)。

注:「メタンハイドレード (Methane hydrate)」は、メタンを中心にして周囲を水分子が囲んだ形になっている物質で、海底に存在し、見た目は氷に似ているが、火をつけると燃える。1立方mのメタンハイドレートを1気圧の状態で解凍すると164立方mのメタンガスに変わる。

このメタンはメタンハイドレートの体積の20%に過ぎず、他の80%は水である。石油や石炭に比べ燃焼時の二酸化炭素排出量がおよそ半分であるため、地球温暖化対策としても有効な新エネルギーと注目されている。

また、日本近海は世界最大のメタンハイドレート埋蔵量があるといわれ、日本のエネルギー問題を解決する物質として考えられているが、現在のところ採掘にかかるコストが販売による利益を上回るため、研究用以外の目的では採掘されていない。

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