コラム・レポート
ラッフルズ風卵春巻きにカクテルで豪華な気分に(62-2)
【OL銀座食楽部】外堀通りに面する新しい商業施設「マロニエゲート」の11階にあるシンガポール料理の店「シンガプーラテラス」はシンガポールの「ラッフルズホテル」の中にある「エンパイア・カフェ」を模している。
「テーブルや椅子、イギリスの陶器タイルを壁に飾り張りした内装をそのまま再現しています」と壁に飾られた1960年代のラッフルズホテルのモノクロ写真を指しながら、かつてラッフルズホテルで調理場に立ったこともあるシェフ、アラン・ルーさんが語る。
ユニークな雰囲気の中で、現地から招かれたシェフ、ルーさんが料理を振るう。まずは、女性に人気があるという「ポピア」(980円、1人前2枚で、注文は2人前から)が出てきた。野菜などの具が巻かれた生春巻きと思っていたが、この店では卵で作った薄皮「エッグスキン」で好みの具を自分で包んで食べるというスタイルだ。銀の盆に色とりどりの具材が小皿で並んでいる。
蒸し鶏、エビ、トマト、キュウリ、フライドエシャロットなどおよそ10種類の具を、広げたエッグスキンの端へ盛り付け、手前から巻き、特製のスウィートチリソースを付けて頬張る。しっとりした食感と風味豊かなエッグスキンは中の具材やソースに勝るとも劣らない存在感だ。ソースは他に真っ赤なチリソースと、「スィートダークソヤソース」という黒いとろみのあるソースが添えられる。
「スィートダークソヤソース」はしょう油と蜂蜜、砂糖を煮詰めたもので、北京ダックを食べる際に付けるソースに味も色も似ている。「広げたエッグスキンに先に塗ってから、野菜をのせて巻いて食べた方が味がなじんでおいしい」とルーさんから食べ方を教えてもらった。新鮮なエビや野菜の瑞々しい食感と、甘く濃厚なしょう油の香りが広がる。お好みでコリアンダーやニンニクのすりおろしも添えたりと、自由な組み合わせで食べられるのも楽しい。
「シンガポールでは卵の値がはるので、屋台などでは専ら米粉の皮を使いますが、主にホテルのレストランで卵のポピアが提供されます」とルーさんが説明する。卵に小麦粉を混ぜたり、各レストランで生地は独自の配合があるようだ。この店では卵と塩のみで、6台のストーブ(ガス台)で1日200枚を毎日焼いているという。
「女性が喜ぶ顔が見たい」と微笑むルーさんは、この5月からランチタイムにこのポピアが好きなだけ食べられる「ポピアランチ」(1260円、70分)をはじめた。野菜をたくさん食べられるうえ、自分で巻く楽しみもあり、女性が喜びそうなメニューだ。
続いて出された一品料理は「ペーパーラップチキン アチャ添え」(5ピース1680円)だ。その名のとおり、紙に包まれた鶏もも肉の揚げ料理で、手で紙包みを破って食べる。オリジナルは香港にあるというが、今ではシンガポールでも定着している。
時間がたっても固くなりにくい「総州古白鶏(そうしゅうこはくどり)」を使用している。丸2日間、下味をしみ込ませたもも肉を専用の紙に包み、そのまま180度の油で揚げる。肉汁が閉じ込められ、味が染みていて柔らかい。
とりわけ私の味覚を刺激したのは添えられている「アチャ」だ。野菜とフルーツで作るピクルスといったものだろうか。細切りされた大根、人参、キャベツ、インゲン、パイナップルという組み合わせで、「レモングラス、ブルージンジャー、タマネギ、ニンニク、ウコンにお酢や砂糖、塩を加えたペーストに1日漬け込んでいます」とルーさんが説明する。酸味が強く、食べているうちにやみつきになってしまった。
この店では親会社のポートジャパングループが仕入れている世界のワインが豊富に揃っており、「ピノノワール デルタ ヴィンヤード(ボトル6000円)お薦めはペーパーラップチキン」というようにワインリストにはそれに合う料理が紹介されている。
次に出てきたのはインド風味のカレー「カリーチキン」(1580円)で、ココナッツミルクベースでスパイスが効き、ピリッと辛く、これから夏に向けて頼みたくなるひと品だ。カレーにはトマトやコリアンダーが添えられ、真ん中にある大きな3つの塊は古白鶏で、骨がほろっと崩れるほど煮込まれている。
添えられてきたご飯は「ゴールデンフェニックス」という香り米で、一粒一粒がしっかりした甘味があり、まろやかでコクのある辛さのカレーと相まってスプーンが止まらない。
食後のデザートには地元定番のかき氷「アイスカチャン」(680円)を注文した。色鮮やかな桃色と緑と黄色が涼やかで、ココナッツシュガーとエバミルクのシロップとスウィートコーンがトッピングされている。意外な組合わせに少々戸惑うが、ひと口味わうと日本のかき氷と変わらない味で、中までスプーンを入れると、こんどはナタデココや小豆が出てきて、驚かせてくれる。
最後に、イギリスの小説家、サマセット・モームが「東洋の神秘」と称えたシンガポール湾の夕焼けを表現したカクテル「シンガポール・スリング」(1200円)を頼んだ。
「ラッフルズホテル」の2階にある「ロング・バー」が発祥とされる伝統あるカクテルで、ジンベースでチェリーブランデーやパイナップルジュースなど9種類もの材料とクラッシュアイスをシェイクさせたカクテルは「ロング・バー」で提供されるものと同じレシピだそうだ。甘口のさっぱりした味わいで、アジアの南国風のリゾート気分に浸れた。
同店では土・日曜日と祝日の15時から17時30分にイギリス植民地時代に定着した文化「ハイ・ティー」(1800円)も楽しめる。紅茶と一緒にスコーン、ケーキなどのスイーツが2段、3段重ねのティースタンドで供され、シュウマイやギョーザなどの中華の点心も一緒に味わえる。
多くの民族による混合文化のシンガポールは、さまざまな味やスタイルが取り入れられており、休日の午後のひと時に「ハイ・ティー」を味わうとどんな気分になれるのだろうか(【OL銀座食楽部】では複数のフードアナリストの女性が実際にレストランを訪れ、そのレポートを毎週、金曜から週末に掲載します。今回は"郷土料理で町おこし"がテーマのtsubokoさんが書いています)。
注:「シンガプーラテラス」は2007年9月のオープンと同時に、シンガポール政府観光局日本支局より「シンガポール美食発見!」の認定を受けた。これは、日本にあるおいしいシンガポール料理を提供するレストランの認定制度で、ハイナンチキンライス、ラクサ、ぺラナカン料理などのシンガポールの名物料理がメニューに含まれることと、料理の味、本格度、盛り付け、レストランの雰囲気が審査の基準となっており、毎年認定を受ける必要がある。
注:「ラッフルズホテル(Raffles Hotel)」はシンガポールの最高級ホテルのひとつで、伝統的なコロニアル様式の代表でもある。イギリス植民地時代の1887年にアルメニア人のサーキーズ兄弟によって、客室数わずか10室のバンガローをホテルとして開業した。
開業当時の名は「ビーチハウス」で、1899年には現在の原型となるコロニアル様式の建物が完成し、1989年に設立されたラッフルズ・インターナショナルにより全面改装が行われ、1991年に再開された。ホテルの名称はトーマス・ラッフルズに因んで名付けられた。客室数は103室で、全室がスイートである。
注:「総州古白鶏」はプレコフーズ(大田区北千束1-3-5)が茨城県産の鶏を自社解体して販売しているオリジナルブランド鶏のこと。
注:「ゴールデンフェニックス」はタイの精米メーカー、チアメン社が販売している「香り米」で、日本では木徳神糧(江戸川区西瑞江2-14-6、03-5636-1501)が代理店として販売している。
注:サマセット・モーム(1874-1965)は両親が2人ともイギリス人だが、父親がフランスの在パリ・イギリス大使館の顧問弁護士時代に生まれ、8歳で母親を、10歳で父親を亡くし、南イングランドで牧師をしていた叔父に引き取られ、1887年にキングズ・スクールに入学、1892年にロンドンの聖トマス病院付属医学校に入学、作家として自立することを考え、講義にあまり出席しなかった。
1897年に処女長編小説「ランベスのライザ」を出版、1914年からの第1次世界大戦中、イギリス「MI6」で諜報部員として勤務、1915年に「人間の絆」を出版、1917年にロシア革命阻止のためにロシアへ送り込まれるも、使命を果たせず、健康を悪化して帰国、1919年に療養中に「月と六ペンス」を発表、ベストセラーとなり、作家としての地位を確立した。
その後、ハワイ、サモアなど南太平洋の島々、日本及び東南アジアの国々、メキシコを訪れて、それぞれの土地を題材にした小説も多い。シンガポールのラッフルズ・ホテルを「ラッフルズ、その名は東洋の神秘に彩られている」とほめたたえ、長期滞在したことでも知られる。タイの首都、バンコクにあるザ・オリエンタル・バンコクも評価し、長期滞在しており、同ホテルにはモームの名を冠したスイートルームがある。
店名=「シンガプーラテラス」(中央区銀座2?2?14、マロニエゲート11階、03-3563-0151)
営業時間=平日はランチが11時から15時(注文は14時30分まで)、ディナーが17時30から23時まで(注文は22時まで)。土・日曜日と祝日のみティータイムが15時から17時30分(注文は17時まで)。年中無休(元旦を除く)。
平日の生春巻きの食べ放題の「ポピアランチ」は1260円から(70分時間制)。夜の単品は780円から、コースは3800円から6500円。
URL= http://www.singapura-t.com/
日本フードアナリスト協会







